前回の予告の通りペイントデパートメントでの経験についてポストする。今回で、プロセスインプルーブメント、問題解決に関してのポストは一応終了となる。(次回からは少し突っ込んだ実際の使用マテリアル、設計手法などをふくめたフレーム製作の話に移ることにする。)
溶接を始めてからちょうど3年ほどがたち、溶接クオリティーもスピードも格段に上がり週間ノルマの達成本数もトップになるまでに至っていた。そんなころに、同時にこれまでに自分がトライしたインプルーブメントやマネージメントの仕事が評価を得て、次なるリスポンシビリティーを言い渡されることとなった。
当時Seven のプロダクションの中で最もオーガナイズされていなかったのがペイントデパートメントであった。フレームペイントにかかる所要時間、プロセス、そしてその中で生じていた問題などすべてを含めた”スタンダード”が実に曖昧な状態で機能していた。
このペイントディビジョンをオーガナイズし直すということ、それが自分がやるべきことであった。
自分自身はペイントの経験などなかったので、オーガナイズなどいきなり出来るわけなどないと思い、そこでまず現状で行われているペイントについて一から十まで学ぶことから始めた。要するにまずぺインターになってみなければ始まらないと考えたわけである。
*下の写真は当時のリードぺインターだったBen。彼からカーボン、メタル共にペイントの一部始終を教わった。
教わりながら少しづつ実際にペイントを始めるようになり、だんだん慣れてくると同時にプロセスごとの意味や、何が必要で、何が不必要なのか、どうすればもっとやりやすくなるのか、ミステイクを減らせるか、またペイント用テンプレート(指示書)のつくり方、さらにはペイント全体の工程を通しての人の導線なども含めてじっくり検証してみた。
それと並行して、彼(Ben)がペイントを開始するところから終了するところまでの移動時間も含めた行動すべての詳細なリストを作り、タイムを計るなどしてかなり徹底的に現状をつきつめて分析もしてみた。
詳細な作業リストについては例えば、これからペイントするフレームをラックからとり、スタンドにセッティングするまでの行動の内容を分解してさらに細かい作業リストを作るなどである。
そこまでやらなければ今まで改善できなかったものが何なのかは、やはり見えてこないのではないかと考えた末のことである。
色々考え、分析していく中で特に大きな問題だったのは、マスキング作業の環境の悪さがあった。最も重要なマスキング作業がブースの中で行われず外でされていた。しかもすぐ隣でフレームの仕上げ作業が行われているというダスティーな環境で。。。実際そのダストが原因でやり直し作業がかなりの頻度で起こっていた。しかも当時Seven では定期的な清掃というものを何年もしていないような状態であったからその悪影響はさらに大きかった。(*このプロセスインプルーブメントを機にペイントブースだけでなくそれぞれのデパートメントで週一回の清掃をすることを提案した。現在もそれは実行されている。整理整頓はトヨタプロダクションシステムの7つある必須項目の一つでもある。)
当時マスキングのために設けられるブースはなかった。かわりにすぐ近くにインスペクションルームがあった。しかし、インスペクションには頭上に明るいライトがあれば良いことでわざわざ部屋を設ける必要はないと判断し、このブースをマスキングのために使用する案を今回のインプルーブメントの内容に盛り込んだ。
*写真は最終的にマスキングのために使用されることとなったブース内の写真(中にいるのはBen 。懐かしい。。。笑)
そんな感じで何か月間か、溶接と並行してペイントをしながらレポートにまとめた。(プロセスインプルーブメントだけでなくペイントのヘルプもさせられていたかな、結局。。。)
以下の写真はレポートの一部。詳細に分類した作業項目、それらの作業内容、スタンダートとなるタイム、以前との変更点と改善点、また結果的に以前よりどのくらい(%) よくなるのかなどを詳細にまとめた。その後実行されることとなる。(*現在はペイントプロセス自体の変更に伴い、当時とは多少異なっている。)
結果的に約2年ほど溶接とペイントというかたちでペイントもすることとなった。
こうしたプロセスの改善はSeven の規模の会社になってくると必要不可欠になる。
生産ラインのスムーズ化、すなわちいろいろなところでのスタンダード化は絶対に不可欠になることもよく理解できる。しかし一方で、その流れに乗らないカスタマーからのオプション的な要求やそのための作業が発生した時にはこの規模の会社のウィークポイントがあらわになってしまうことも同時に理解できた。
また、これらの仕事の経験を機にこの後何年かSeven で仕事をしていくうちに、ハンドメイドによる自転車のフレーム制作という特殊な世界ではさらにこの上にもっと大切なことがあるのではないかと、考えるようになっていくのだが、それはまだその当時は自身の中ではそんなに大きくはならなかった。とにかく目の前の仕事をめいいっぱいこなすこと、様々なことを誰よりも多く吸収することに気持ちが向いていたためである。
つづく。。。